モニタリングの役割とコミュニケーション
1 経営は役割分担のピラミッド構造 企業体の組織構造はトップから担当者までのピラミッド構造で成り立っています。それは経営者一人では「経営」はできないからです。そのために、経営に必要な役割(経営企画・管理、経理、総務、人事、営業・販売、リスク管理、業務管理など)とその業務遂行責任を各部門に割り当て、それぞれの部門に経営資源(人、物、金)を配分して経営の中身を分担させています。
2 各部門に任せきりでは経営判断ができない
企業体が正しく運営されているかどうかを経営者が知らなければ必要な経営判断(リスク評価、リスクテイク、リスク管理、経営資源投入の可否など)はできません。
(1)部門長によるモニタリング(=部門マネジメント)
そのために各部門長から各部門の役割の遂行状況(うまく機能しているか、問題があるか)を報告させ、経営者が実態と問題の重要度を評価して対応しなければなりません。各部門長は定期的にその部門の業務遂行状況を把握(これを部門長のマネジメントといいます)する必要がありますが、これは部門のモニタリングになります。
(2)経営者によるモニタリング(=経営のモニタリング)
各部門長は経営者が必要とする事項(リスク管理規程、委員会規程等で管理すべきリスク項目、報告内容等を予め社内に周知します)について実態を評価・報告し、経営者はこれを経営としてリスク評価、対応することになります。(これを経営者によるモニタリングといいます)
3 コミュニケーションの重要性
経営者は各部門の業務内容に精通していないことが多いため、適切な経営判断を行うためには各部門長が適切に評価・報告することが経営者としてのリスク評価の前提になります。そのためには経営者は部門長との適時・適切なコミュニケーションを図り、部門長の報告内容について深く理解するように努めなければなりません。
適時・適切なモニタリングは監督官庁の要請でもある
例えば金融庁は金融機関向けの監督指針で「経営陣は、リスク管理態勢、コンプライアンス態勢、内部監査態勢などについて、定期的にモニタリングを行い、その結果を踏まえて経営管理態勢の見直しを行うべきである」と明記しています。モニタリングを経営判断やリスクテイク方針に適切に反映するため、不断にモニタリング項目や内容を見直していくことが求められているのです。