株式会社内部監査

内部監査部門は「リスクカルチャー」の教育機関

(1)内部監査部門の高度化

 最近、内部監査の高度化という言葉をよく耳にします。内部監査を以下の3段階に整理し、現状がどの段階にあるのかを確認して上位の段階に向けて取り組むことで、内部監査の高度化を図ろうというものです。現状では第2段階のリスクベース監査を志向されている内部監査部門が多いと思われますが、皆様のところはいかがでしょうか。

a.第1段階 事務不備監査

b.第2段階 リスクベース監査

c.第3段階 経営監査

(2)内部監査の高度化を阻む壁

 しかし、内部監査部門の高度化を図るためには、内部監査人の側だけでなく、内部監査の受け手である社内の被監査部門の「内部管理態勢についての理解とその実践」(これを私どもは「リスク・カルチャー」と呼びます。)が重要です。

 この観点から現状の各企業体の実態を見ますと、「内部監査は黙って通り過ぎるのを待つだけ」という受け身の立場で内部監査を受けていたり、「粗さがしに来ただけでしょ」という内部監査に関する誤解も未だに見受けられます。このことが、内部監査の高度化を阻む一つの壁になっているようです。

(3)社内の教育機関としての内部監査部門の立ち位置を理解すること

 現在の内部監査は「経営目標の達成や経営管理態勢の改善に向けたアドバイザー」の役割を担うものという立ち位置にシフトしてきており、内部監査人はもちろん、被監査部門も見方を改めていただかなくてはなりません。

 おそらく社内には、内部監査態勢についての理解度において、内部監査人以上の方はとても少ないと思われますから、内部監査部門は自らの高度化に取組みだけでなく、同時に社内のリスクカルチャーの醸成に従来以上に注力することが期待されているのです。その意味でも、内部監査部門は内部管理態勢向上のための「社内の教育機関」であることを自ら理解していく必要があります。

(4)まずは「リスクマネジメント」の理解を図りましょう。 

  経営者や組織体の管理者は、リスクの所在をモニタリングで把握し、その経営に対する重要度を評価し、適切にこれをコントロール(内部統制)することが求められます。リスクマネジメントはこのような取組みの「プロセス」ということができ、PDCAサイクルで取り組むものです。

 内部監査部門は、このリスクマネジメントの理解と実践について、内部監査を通じて教育(何をどのようにやるのか。)し、社内での理解度を高めることがとても大切です。


内部監査人は「記録人」

 内部監査の役割が「内部管理態勢の有効性・効率性の確認」であることは論を待ちませんが、このほかに内部監査の重要な役割があります。それは、内部監査が内部管理態勢の有効性・効率性に係る「現状と課題の記録」であるということです。
 ご承知のとおり、組織体は自らの組織運営が有効かつ適切であることを自己証明し、対外的にこれを説明できるよう努めることが必要ですが、内部監査部門はこの説明責任を果たすためのほとんど唯一の組織です。内部監査で広く社内全体の内部管理態勢の現状を確認し、その有効性・適切性を検証することにより、企業は、自らの組織の現状を適切に把握することができます。内部監査部門が組織体の内部管理態勢の現状と課題をありのままに報告・記録することで、企業は自浄作用を発揮することができ、そのことを通じて企業は自らの組織運営における透明性を高めることができます。つまり、内部監査人は独立性と客観性とを備えた「記録人」でもあるということでもあります。
 従って、内部監査結果報告書、確認シート(監査調書)は、自浄作用があることを説明できるだけの客観性、論理性があることが大切です。報告を受けた経営陣が理解でき、改善に取り組むことができるよう、内部監査結果報告書等の書類は、確認した重要な事実を踏まえて、論理的かつ具体的なものにしていく努力を続けたいものです。そのために、内部監査人は「論理性」を高め、「文章構成力」を養い、「コミュニケーション能力」にたけていなければなりません。内部監査人は記録人なのですから。