株式会社内部監査

監査役との連携~三様監査の推進の観点から

コーポレートガバナンス・コードの改定

  • コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等に対して、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う仕組みのことを言います。コーポレートガバナンス・コードは、平成27年に金融庁の有識者会議が中心となって策定した、「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」で、会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった観点を過度に強調するのではなく、むしろ「攻めのガバナンス」の実現を目指すものと位置付けられています。(詳細は金融庁ホームページを参照)
  • 今般2021年6月にコーポレートガバナンス・コードの改定が公表されましたが、この中で内部監査に関して、従来から明記されていた会計監査人、監査役との連携の確保(原則3-2の補充原則)に加えて、①取締役会による内部監査部門の活用(原則4-3の補充原則)、②内部監査部門からの取締役会及び監査役会への直接報告(原則4-13の補充原則)、の2つの補充原則が追加されました。

 

会計監査人、監査役との連携の確保

  • これはいわゆる「三様監査」のことをいい、従来からコーポレートガバナンスにおいて特に重視されていたものです。当社の関与先においても内部監査に関して監査役との対話はそれなりに行われていますが、どちらかといえば内部監査報告を送付し、これに関する監査役からの質問が行われる程度に止まっているところが大半でした。
  • また、内部監査部門が会計監査報告書を間接的に受け取っているケースが多く、直接的な対話までは行われていない状況が散見されています。
  • 来年度からの東証の新市場区分適用開始を受けて、上場企業を中心にコーポレートガバナンス体制の一層の強化のために、三様監査の役割が重要となりますから、内部監査部門は、監査役、会計監査人との直接かつ双方向の対話を実施していくことが望まれます。

 

取締役会による内部監査部門の活用、取締役会・監査役会への直接報告

  • 多くの会社では、内部監査結果報告を代表取締役などの最高経営者に行っていても、取締役会や監査役会に直接的に報告するケースは大変少ないといわれています。今回のコーポレートガバナンス・コードの改定において取締役会による内部監査部門の活用と取締役会、監査役への直接報告が追加されたことは大きな前進と考えます。
  • すなわち、このことは、組織体の価値向上に向けて「取締役会、監査役会と内部監査部門の双方向による意思疎通」が重要ということを明確化したものと受け止められます。今後、代表取締役との意思疎通を強化し、取締役会、監査役会への直接報告の必要性について積極的に進言する機会を持っていきたいものです。
  • 既に三様監査の仕組みを構築されている会社もあります。このような会社では、その対話内容の高度化、すなわち、監査に関するリスクアセスメント段階での意見交換、双方の監査結果を踏まえた対応策の検討・取締役会への提言、などの実効性向上が期待されます。