社内規程の課題
内部監査にあたっては、内部管理態勢の二つの要素である「体制整備」と「運用」のうち、「体制整備」の中身である、「規程等の整備」を確認することがスタートであり、重要です。小規模な事業体、特に認可業種の事業体においては、認可取得にあたって一通りの内部管理態勢整備のための規程等が作成されていますが、多くの場合、次のような課題が認められています。
1 規程通りの「運用」が行われていなかったり、規程そのものの存在が周知されていない
2 規程が「事業体の規模・特性」を踏まえていないため、規程通りの「運用」に無理があり、各組織が独自の「運用」を行っている
などの課題です。1の規程が適切なものであった場合は、なぜ「規程に沿った運用」が行われていないのか、について被監査部署にヒアリングと証跡をもとに、真因の究明と規模・特性に合った対応の方向性、を合意し、経営報告を行いますが、これまでの内部監査を通じて認められる課題の多くは、2の「規程が事業体の規模・特性を踏まえていない」という課題だと考えます。
このような場合は、事業体とのエグジットミーティングにおいて、「規程の策定にあたっての考え方」についてディスカッションしています。
社内規程の作成にあたっての考え方
社内規程、特に「業務に関する規程」を策定する場合の基本的な考え方について、当社は次のように考えます。
1 スタートは「業務分掌(規程)」。これが組織における役割分担の基本。ここに明記された各部門の「業務」が「分掌業務」となる。
*事業体は「役割分担の体系」ですから、経営陣は各組織にこのようにして役割と責任を付与し、実施状況をモニタリングにより把握・指導する。
2 各部門の「分掌業務」について規程、手順書を定める
(1)規程:分掌業務の管理に関する方針、原則を定めるもの。規程には、各部門の役割と責任を定め、所管は各部門であっても会社全体としての管理の考え方に従う。
(2)手順書、マニュアル:各部門の業務の遂行に関する実務を定めるもの。各部門が管理する。
3 各部門の規程の位置づけ、相関関係
(1)各部門の規程は「縦」の定めであり、各部門ごとに定める
(2)会社全体としての規程は「横」の定めであり、各部門の規程の共通ルールを定める
従って、各部門の規程には、会社全体の管理について定める規程における各部門の役割と責任、「業務管理体制」を定めて、会社全体としての整合性・統一性・網羅性を確保するとともに、対応漏れを防止する。この「縦」、「横」の規程の体系が規程体系となる。
金融検査マニュアルにおける規程等の整備についての考え方
規程作成にあたっての考え方については、認可業種である金融機関向けの旧検査マニュアルなどでも明記されています。例えば、法令等遵守態勢では、「管理者の役割・責任」として、内部規程等の策定についての「管理者の役割・責任」の中で、「法令等遵守規程の内容」に、コンプライアンス統括部門の役割・責任・組織に関する取り決め、各種法令等遵守状況のモニタリングに関する取り決め、リーガルチェックに関する取り決め、研修・指導等の実施に関する取り決め、取締役会・監査役への報告に関する取り決め、等々の定めを行うことが求められています。
私どもの内部監査においては、各部門の業務監査において、まず内部規程で定める「業務管理」、「業務の遂行」に関する各規程(「社内ルール」)を把握し、次にその「運用」状況についてヒアリングと証跡で確認していきます。このように、規程等の適切性については業務監査の中で個別に把握・確認を進めていくことにしています。
各社の規程等の整備にあたっての参考にしていただければ幸いです。