監査事務所指摘事例から
月刊監査研究12月号に公認会計士・監査審査会事務局の平野課長補佐が寄稿されている「監査事務所検査における最近の指摘事例」から、内部監査人として参考になる見解が記載されていましたので報告します。
根本原因の究明における批判的な検討が不足している事例
1 重要な不備を含む複数の不備が認められた監査事例において、監査チームが被監査会社から入手した情報との整合性を批判的に検討する意識が不足していること、監査事務所の管理本部が監査チームが被監査会社から入手した情報を踏まえて批判的な検討を行うための施策を十分に実施できていないこと、監査事務所の審査担当者が監査チームの実施した監査手続きを批判的に検証するための施策を十分に実施できていないという品質管理態勢の不備、の共通原因が認められた事例。
2 同じく重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められた監査事例において、監査業務執行社員が監査の基準及び現行の監査基準が求める手続きの水準を十分理解していないことに加え、監査に際し被監査会社の経営者が使用した重要な仮定を十分理解しておらず、重要な仮定に係る経営者の主張を批判的に検討していないなど、職業的猜疑心を十分発揮していない事例。
批判的な検討とは
ここでいう「批判的な検討」とは、監査基準(監査マニュアル)に定めた着眼点に照らして、被監査部門から入手した情報(証跡)が適切にその事実を証明するものであるかどうか、を吟味・検証すること、と思われます。監査の現場においては、特に被監査部門の業務に精通していない監査人は、被監査部門の説明とその説明内容との整合性を曖昧にしたまま、被監査部門の説明をもって事実と認定してしまうことは、批判的な検討とはいえません。
どうすればよいか
では、批判的な検討を行うにはどうすればよいのでしょうか。多忙な被監査部門に対して追加証跡の提出を求めたり、更なる説明を求めることに躊躇することも多いと思われますが、監査人は自らの役割である、「組織体の経営に付加価値を提供する」ということの本質は、適切な評価を加えることにあるので、真因究明にあたっては「なぜ」を5回繰り返す、という「初心」を忘れてはならないと思います。その意味からも今回の監査事務所検査の指摘事例はともすれば忘れがちな監査の本質に気付かされたものといえます。
以上